幸せの黄色いホーン レコードプレーヤー製作記 13話 アームのショート化


ロングタイプのリニアブッシュの次は、アームのショート化を試してみました。
レコード盤上をリニアシャフトが横切るぐらいアーム長を短くし、アーム全体の重量を軽量化するということです。



LM4Lを使用したアームで実験。
PE200をカートリッジ側にずらせば、簡単にアーム長を短くできます。
パイプ長は200mmのまま。
しかし、PE200の下端部が下方に出っ張っているため、この下端部がレコード面に接触してしまいます。
そこで、長めのボルトとナットを使用し、カートリッジをシェルから離間して固定。
これで、PE200の下端とレコード面との間に約5mm程度の隙間を確保することができました。



支点から後方が長くなり、ヤジロベエのようなプロポーションになったため、カウンターウェイトを1つ減らすことができました。
このため、アーム全体の重量(70.9g)は約14g減少しました。
指先に感じるアームの動作が確実に軽くなりました。



上の画像はアルミパイプ長が200mmのもの。
下の画像はアルミパイプ長を150mmとした新型。
全体の重量は55gと最軽量。



リード線はパイプ後端から取り出し、また、パイプ後端部に穴を開け、その穴に絡げた銅線にアース線を半田付けしてあります。
黄色いヘッドシェルが重そうに見えますが、指掛け込みの重量はたったの6gしかありません。
マグネシウムの比重はアルミニウムより小さく、6gのアルミニウムではこれだけの構造物を構成することは当然不可能です。
実際にやってみると分かるのですが、シェルのような小さなアルミ片でも3g、4g(1円玉は1g)という重量になってしまいます。
そして、指掛けやこのアルミ片を取り付けるためのボルトナットが加わると、6gに収めることは無理です。



このショートタイプのアームはトラッキング性能が向上しているような気がします。
では、今までの長いタイプと比べて音の違いは?
う〜む、よく分かりません。
しかし、音が変わらず、トラッキング性能が向上するのならショート化は採用すべき要素です。
一方、リニアシャフトにミシンオイル等を塗布してリニアブッシュのベアリングに浸透させた場合、オイルがレコード盤上に滴り落ちる可能性があります。
それに、取り扱いが荒いと、レコードとアーム、リニアシャフトが接触し、これはろくなことになりません。



なお、このアーム長のショート化はヨハネスさんの提案によるものでした。
ヨハネスさん、ありがとう。

ヨハネスさんからのもう1つの提案。

ヨ「おい、キットにして売り出せよ。」
お「そりゃ、キット売れないね。」


YouTube"DIY Linear Tracking Tonearm by kiirojbl 5"


パッシブ型リニアトラッキングアーム、作ってみる前は、音が左右の何れかにかたよるのでは?という不安がありました。
アームが移動する際、針先が音溝の左右の壁の何れかに押し付けられる…

しかし、これは普通のスイングタイプのアームでも同じこと。
やはりアームがスイングする際、針先が音溝の左右の壁の何れかに押し付けられる。

で、パッシブ型リニアトラッキングアーム、やってみると音がかたよるなんてことはありませんでした。

逆に、アンチスケーティングとかインサイドフォースキャンセラーと呼ばれる機構を搭載していない通常のスイングタイプのアームの方が、よっぽど音がかたよるような気がしてくる。
でも、実際に聴いてみると、そうじゃない。

インサイドフォースキャンセラーを所定値以上に極端にかけてゆくと、確かに音はかたよる。
一方、インサイドフォースキャンセラーを外した場合、これは問題がないように思う。
やっぱり、オーディオはやってみないと分からないことが多いです。



LM4Lのショートアーム(パイプ長15cm)は合格。
しかし、PE200の下端部が下方に出っ張っているのが気になります。
そこで、購入したものの使っていなかったPF600を使用したショートアームを作ってみました。

PF600の穴の直径は10mmなのでLM5Lを使用。
また、パイプは10mm径、長さ15cmのものを使用し、裏側に大きめの穴を開け2本のネジでPF600に固定しました。
アーム全体の重量は62gとなり、LM4Lを使用したアームよりも7gほど重くなりました。



こんな具合にレコード面側に出っ張りが無くなりました。



5mm径のステンレス製リニアシャフトもピカールで磨き直し、完璧だねっ!と思ったのですが、不思議と滑りが悪いのです。
頻繁にミストラッキングをします。



あれこれ調整しているうちに気付いたのはPF600の3本のネジの締め具合。
どうもネジを締めすぎるとPF600が変形、さらに、LM5Lまでもが微妙に変形してしまうようです。
締め付けを軽くするとやや滑りは良くなりましたが、どうもLM5Lが変形してしまったようです。
う〜む。

YouTube"DIY Linear Tracking Tonearm by kiirojbl 6"

このYouTubeの動画は、レコードの穴を偏心させるとまともにトラッキングしないので偏心させていません。
LM5Lのアームは、ミストラッキングが気になり没。
LM4Lのショートアームを復活させました。

LM4Lのショートアームは、試作アームの最終型として数ヶ月使用しました。
各部の調整や、潤滑油の選択等、様々な要素を試してみました。
分かってきたことは、リニアシャフトの研磨が重要なこと、それからリニアシャフトに付着した塵(特に綿ゴミの繊維)によりミストラッキングを生じることです。
綿ゴミの極小の繊維がリニアシャフトに付着するとリニアブッシュ内部のベアリングボールがそれを乗り越えられないのだと思います。

レコード再生の前にCRC 5-56を浸透させたシャフトをティシュで拭くと塵によるミストラッキングを防ぐことができます。
リニアブッシュの中に塵が侵入してしまった場合は、5-56をリニアブッシュの中に拭きつけ洗浄します。
潤滑油は最終的にミシン油を使用せず5-56のみを使用しています。


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