幸せの黄色いホーン レコードプレーヤー製作記 05話 1号機の完成


できあがってみると、これがあの薄汚いPL-30Lだったとはとても思えません。
WE308Lに付属していた5pinコードがないので、シェル・カートリッジ間のリード線端子を流用しました。
早速使用してみると、あのころの感触を思い出しました。
このSAECのロングアームは高校2年生の夏に購入したもの。
当時のオーディオ装置で生き残っているのは、このアームだけ。
こうしてまた使うことができて幸せです。



WE-308Lの取扱説明書(日本語版)は、Vinyl Engine("Vinyl/ビニール"はレコードの意味)という有名なサイトからダウンロードしました。
SL-1700の詳しい資料も入手でき、とても助かりました。
このサイトのLibraryの資料を利用するためには無料登録が必要。
所定事項を書き込み、意味の無い5つの単語のうち、指定された1番目から5番目のいずれかの単語(例えば3番目とか)を書き込みます。

ところで、GT-2000の長岡評には「以前、KP-800、QL-Y55Fのターンテーブルを33回転で回しておいて、電源を切ってから何秒で止まるかテストしたことがある。KP-800が16秒、QL-Y55Fが18秒だった。本機ではなんと53秒かかった。慣性モーメントの大きさがわかる。」などと書いてあります。
そこでPL-30L+ステンレス板1枚で計測してみたら50秒。
SH・ローター方式モーターであるため、シャフトとスリーブの摩擦が非常に小さいからかもしれません。
いずれにせよオーオタ的な評価でもGT-2000と似たようなものなのね、という訳でPL-30Lもそんなに悪くないのかなぁと思っています。



PL-30Lのフォノモーター部

モーター クォーツPLL DCサーボ・ホールモーター
駆動方式 ダイレクトドライブ
軸受構造 SH・ローター方式
ターンテーブル直径 31cm
ターンテーブル慣性質量 330kg-cm2(ターンテーブルシート含む)
回転数 33 1/3、45rpm
回転数切換え ショートストロークスイッチによる電子式
回転ムラ 0.012%以下(PL-30L、WRMS/FG直読法)
0.013%以下(PL-30、WRMS/FG直読法)
0.023%以下(WRMS/JIS)
S/N 78dB以上(DIN-B)
63dB以上(JIS)
負荷変動 0%(針圧200g以内)
起動特性 1/3回転以内
起動トルク 1.3kg-cm
速度検出方式 全周積分方式FG
回転数偏差 0.002%以下
ドリフト 時間ドリフト:0.00008%/h
温度ドリフト:0.00003%/℃
ブレーキ機構 純電子式

SH・ローター方式モーター
回転精度の限界を追及するため、モーター底部にあったローターの支点(ベアリング)をターンテーブルのすぐ下に移動させたSH・ローター方式モーターを採用しており、これによりモーターの重心と支点の位置をほぼ一致させることに成功しています。
このため、重心と支点の位置が大幅にズレていた従来構造では防げなかったモーターシャフトと軸受け間のわずかなクリアランスで起るモーターシャフト最下部を支点とする逆円錐運動を解消し、優れた回転特性を確保しています。

このSH・ローター方式モーターの構造は、シャフトとスリーブの精度や強度に依存するよりも、根本的な首振り現象の解決を図ろうとしている点で遥かに優れた解決方法だと思います。
支点部分は、鋼球とこの鋼球の上部に位置する厚さ2mm程度のテフロン板とから構成されています。
鋼球とテフロン板の接点が支点となるため、この接点の状態を把握しやすい。
したがって、プラッターの重量を増加させた場合でも安心ですし、メンテナンスも至極簡単です。



1977年ごろTT-71とWE-308Lを購入し非常に満足したため、その後は他のプレーヤー等には興味を持たなくなりました。
このため、80年以降のプレーヤーについて全く知識がありません。

そこで、80年以降のプレーヤーについて調べてみると、YAMAHAのGT750、1000、2000というのが人気機種であることが分かりました。
GT-2000がいいなぁ〜と調べていると、GT-2000のモーター制御の設計者の方(K&Kさん)のお話(GT-2000/Part2/Part3/Part4)を見つけました。
そこにはこのようなことが書いてありました。

「元モータの設計者の立場からダイレクトドライブモータについて少し書き残しておこうと思います。
ダイレクトドライブモータについての批判の中で時々耳にするのが、コレ。

ターンテーブルを外した状態ではモータがカクカクと回転する。
こんなトルクムラ、回転ムラの多いモータをターンテーブルのイナーシャでごまかして回しているんだからいい音がするわけない。

これは完全に誤解です。
モータのサーボ系の設計はターンテーブルのイナーシャを考慮した上で行っているので、ターンテーブルを外した状態ではサーボ系が不安定になり、いわば発振状態になっているんです。
トルクムラでカクカク回るわけではないので、その状態を見て批判するのは間違ってます。
ターンテーブル無しの状態でもサーボ系のゲインを下げればスムースに回るようになりますが、逆にそのような設計をすると、ターンテーブルをつけたときに最高の性能が得られない。
つまり、軸受けなどの負荷ムラをサーボ系の力を借りて十分に押さえ込むことができなくなるので、ターンテーブル付きの適切なゲイン値のときよりもワウフラッタが悪化してしまうのです。
というわけで、ダイレクトドライブだからといってトルクムラがそんなに大きいわけではありませんので、現在お使いの方はこれについて悲観的に考えることはありません。」

その他にもメンテナンスのお話など、やはり知ったかぶりのシロートよりもプロフェッショナルの方のお話は非常に勉強になり、かつ面白いです。
ダイレクトドライブの方がずっと奥が深そうですね。



ところでターンテーブルの音質と言っても、例えば、直径295mm、約800gのステンレス板やを加えると低音に厚みがつくような気がします。
また、ターンテーブルシートの材質やこのステンレス板とプラッターとの間の挟みものの有無でさえ音が変わります。



直径45cmのアルミ板を載せてみると、かなり雰囲気が変わります。
将来はプラッターもデザインし、自作してみたいと思っています。




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