カタログ散策 12話 JRX100シリーズ

JRX100シリーズについてご質問のメールをいただきましたので調べてみました。するとこれはなかなか魅力的。2155Hを購入した当時、こういうスピーカーシステムがあったら飛びついていたように思います。このシリーズは、JBL社の中では廉価版のPA用スピーカーシステムです。でも、一番売れるクラスですし、当然のことながら競争も激しいため、単なる安物ではありません。JRX100シリーズのウーファーユニットやドライバーユニットは、「All woofers and compression drivers used in JRX100 are manufactured in Northridge, California by JBL Professional.」とJBL社のサイトで紹介されているように、全て米国カリフォルニア州ノースリッジのJBL社で製造されているからです。こうした価格戦略は、このシリーズを通してJBL社製品の性能の高さを知ってもらおうと、そういう意味も込められているように思えます。

JRX100シリーズは、30cm2ウェイのJRX112M、38cm2ウェイのJRX115、38cm準3ウェイのJRX125、サブウーファーのJRX118Sがあります。その他、固定設備用やパワードタイプ(パワーアンプ内蔵型)のバリエーションがあります。



JRX100シリーズの30cmウーファーユニットはM112−8、38cmウーファーユニットはM115−8Aです。何れも2.5インチ(64mm)径のボイスコイルです。JBL社伝統のエッジ巻リボン型のショートボイスコイル。コイルの材質は振動系の軽さから見て間違いなくアルミ製。4インチボイスコイルではないですが、ALTEC社の515シリーズでも3インチですし、EV社のDLシリーズは46cmウーファーに至るまで全て2.5インチボイスコイルでしたから、貧弱なイメージはありません。ちなみに、JBL社の38cmウーファーユニットの中で最も小さなボイスコイル径は2インチ(50mm)です。

M112−8とM115−8Aは、非常に軽い振動系を備えています。M112−8の実効質量(Mms)は、41.4g。4350のミッドバスに使用されていた2202Aが50g、D123が45g、D131が35gですから、ほとんどフルレンジクラスです。また、M115−8Aの実効質量は、53g。一方、D130が60g、2220Aが70g、2226Hが98g、2235Hが155g。これらと比べるとM115−8Aは、まさに「!」 2220AはおろかD130よりも軽い、というのは自慢できますよね。

JRX100シリーズの46cmサブウーファーユニットは2043Gです。連続許容入力300W、ピーク1400Wという本格的なサブウーファーユニットです。ボイスコイル径は3インチ(75mm)。実効質量は153g。これなら迫真の重低音を期待できると思います。ちなみに、2241Hの実効質量は145g、2242Hは158gです。

JRX100シリーズのコンプレッションドライバーは2412H−1。1インチ(25.4mm)ボイスコイル径のチタンダイアフラム。スロート径は1インチです。磁性流体が封入されており、耐入力の向上が図られています。2412H−1と組み合わされているホーンは、バイラジアルホーンの次世代に当たるPT(Progressive Transition)ウェーブガイドホーンというJBL社の最新型。90°×50°タイプです。このホーンの型番はPT−F95HFであると思われます。詳しくはテクニカルノートのProgressive Transition (PT) Waveguidesに解説されています。

ネットワークには、2412H−1の保護のためにソニックガード(Sonic Guard)という保護回路が付加されています(回路図はテクニカルマニュアルを参照して下さい。) なお、JRX125のネットワークはちょっと変わっています。中央のウーファーは中域までカバーしますが、下方のウーファーは低域専用になっています。いわゆる準3ウェイ。DD66000と同様のスタガードライブタイプです。

テクニカルノートによると、JRX100シリーズの位相は、JBL社の昔のスピーカーシステムに見られるような逆相タイプではありません。また、ネットワークの回路図を見てみると、M112−8、M115−8A、2412H−1の各ユニットの位相も、逆相タイプではないようです。

JRX100シリーズは、その俊敏なウーファーユニットの持ち味を生かすようにまとめてゆけば、大型コンプレッションドライバーとは一味違う世界を作り上げることができると思います。ただ、ウーファーユニットの振動系が軽いため、最低域がちょっと苦しそう。JRX118Sの導入して46cmの威力を堪能するのも楽しいと思います。なお、JRX118Sは1台で十分です。

さあ、あとはあなたの腕次第。ゆったり構えてのんびり付き合いましょう。性急なエージングはユニットと耳を傷めるだけ。小音量でもエージングは確実に進みます。最初は思い通りに鳴らなくても、そこは天下のJBL、必ずあなたの努力に報いてくれます。これをベースにマルチアンプの超巨大システムを構築、グッドラック!

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