カタログ散策 10話 ローライダー18

ブラックウィドウBWXシリーズの上位機種であり、サブウーハー用に磁気回路等を強化した機種です。ブラックウィドウBWXよりさらに設計が新しいようです(付属のパンフレットの日付は2002年11月、ダウンロードしたパンフレットの日付は2002年9月でした)。正式名称は「1808−8HPS LOW RIDER 18」です。アルミダイキャスト製フレーム、直径4インチ(10cm)のボイスコイル、ケブラー繊維入りのコーン紙、奥行き162mm、重さ10kgと立派なユニットです。これもサウンドハウスにて約2万円程度で入手できました。

本来的にはサブウーハー用ユニットなのですが、パンフレットには、150Hz以下のサブウーハーシステムに使用できるほか、500Hzまで使用可能と記載されています。ちなみに、46cmウーハーであるJBLの2241Hの推薦最高クロスオーバー周波数は800Hz、2242Hでは1kHzと表示されています。

ローライダー18もバスケットと磁気回路を分離できます。このため、バスケットだけを入手してパッシブラジエター(ドロンコーン)として使用できるのではないかと思っています。ただ、サラウンドやスパイダーが硬い感じなので、うまくいかないかもしれません。なお、パンフレットによるとブラックウィドウのバスケットを利用できるようです。

コルゲーション入りの強靭なコーン紙は、新しく開発されたMの字型サラウンドに支持されており、大きな振幅に耐えられるようになっています。このサラウンドは布を基材にしたものでありウレタン製ではありません。コーン紙の振幅可能な範囲は1.4インチ(3.5cm)、ボイスコイルが磁気ギャップから離脱するまでの片側方向の距離(Xmax)が9.6mmです。また、ボイスコイルの巻き幅は1.15インチ(約2.9cm)であり、これはブラックウィドウシリーズと比較すると80%長くなっているそうです。ちなみにJBLの2242H(サブウーハー用の46cmユニット)では、損傷を受けない振幅範囲が5cm、Xmaxは9mm、ボイスコイルの巻き幅は2.5cmです。

パンフレットによりますと新型の磁気回路は有限要素法に基づくコンピューターモデリングを使用して設計されているそうです。バックプレートとポールピースは冷間鍛造法により超低炭素鋼の塊から作られ、ボイスコイルの十分な往復移動距離を確保するためにえぐられているそうです。また、ポールピースは厚さ10mmのフロントプレートを超えて延在し、ボイスコイルの冷却とmagnetically linear(磁気直線性?知識不足で翻訳できません)を確保しているそうです。こうした構成により、ブラックウィドウシリーズの磁気回路よりも50%以上大きな磁気ギャップエネルギーを得ることができたのだそうです。

バックプレートとポールピースの中央部には、その入り口がベル状に広がっている大きな孔が貫通しています。また、フロントプレートの周囲にも複数の冷却孔が設けられており、磁気回路は穴だらけといった感じです。パンフレットには、こうした冷却構造を備えることにより、パワーコンプレッションの減少を図ることができたと記載されています。

ローライダー18のスペックは以下の通りです。

1808−8HPS
Fs:28.9Hz/Qts:0.342/Mms:163.2g
バスレフ推薦箱の実効容積は、142リットル〜255リットルです。
能率は97.3dB/1W/1m、銅リボンボイスコイル。
耐入力は、連続入力800W、プログラム入力で1600W、ピークでは3200W。

これらのスペック値はJBLの2240Hや2242Hとほぼ同等です。フェライト磁石の大きさもほぼ同じでした。また、これらのスペック値は現代のサブウーハー用ユニットとしては標準的なものだと思います。

パンフレットによると、バスレフ箱に最適化されるように設計されており、シングルレフレックスバンドパス箱も適合するそうです。一方、密閉型、無限大バッフル、ホーン、トランスミッションライン、デュアルレフレックスバンドパス箱はお勧めしないと書かれていました。ちなみに裸で鳴らすと低音はさっぱり出ません。Qtsが小さいため平面バッフルや背面開放型には合わないと思います。

また、750W以上のアンプを使用する場合には、最低25Hzで24dB/octのバターワース型ハイパスフィルターをしなければならないと警告しています。そして、こうしたフィルターを使用しない場合は保証できませんよ、と添え書きがあり、かなり神経質になっています。PAの現場ではボイスコイルの焼損や脱落等の事故が深刻なのでしょう。

使ってみると
外観は購入前にインターネットで集めた画像とは全く異なっていました。下の画像はPEAVEY社のHPに掲載されていた画像です。これにはコルゲーションがありません。初期型なのでしょうか? ちなみに購入したローライダー18のダストキャップの直径は15cmでした。



サブウーハー用のユニットなので中低域の音質に不安があったのですが、これは問題ないと思いました。あばれや濁りはありません。このユニットを用いたQW−118というサブウーハーシステムのパンフレットに表示されているレスポンスグラフを見ると、2次及び3次高調波歪は500Hzに至るまでほぼ一定であり増加していません。

このローライダー18も1808−8SPSと同様に音量の大小にかかわらず分解能に優れています。特に、小音量時において小口径ウーハーのように低音のレベルが極端に落ちたり分解能が低下して不明瞭になったりしません。46cmウーハーはパワーを入れないと本領を発揮しないという話は、1808−8SPSやこのローライダー18のような最近のユニットには当てはまらないように思います。

また、躍動感や最低域のノビは十分以上です。強靭で厚みのある低音です。音量を上げてゆくと、演奏の気迫そのものが伝わってきます。

PEAVEY社の46cmウーハ−ユニットは、価格が安く、ブラックウィドウBWXシリーズとあわせると5機種ものバリエーションがあるため、DIYオーディオの良き素材になると思います。同社の38cmとはあまり価格が変らないので箱を置くスペースが許すのであれば46cmの方が面白いように思います。

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