カタログ散策 08話 BLACK WIDOW BWX

ブラックウィドウBWXシリーズには4機種の46cmウーハーがあります。いずれも、アルミダイキャスト製フレーム、直径4インチ(10cm)のボイスコイル、ケブラー繊維入りのコーン紙、奥行き141mm、重さ8.2kgという点で共通しています。サウンドハウスにて約2万円程度で入手できました。

このシリーズに限らずPEAVEY社のウーハーユニットの特徴として、バスケット(コーン紙とボイスコイルを含むフレーム部分)と磁気回路を分離できることがあげられます。ボイスコイルを焼損した場合には、磁気回路を貫通している3本の太いボルトをはずして、バスケットごと交換することができます。このバスケットもサウンドハウスで入手できます。

パンフレットによると、BWXシリーズのバスケットは、旧BLACK WIDOWシリーズのバスケットと互換性があり、交換した場合のパワーハンドリング(耐入力)は中間的なものになるそうです。ちなみに、耐入力は、旧BLACK WIDOWシリーズとの比較において40%以上改善され、連続入力500W、プログラム入力で1000W、ピークでは2000Wとなっています。

コーン紙はケブラー繊維を混抄した強靭なもので耐水性もあるそうです。アコーディオン型のサラウンド(エッジ)を備え、ダストキャップ(センターキャップ)にも強靭な素材を使用しています。サラウンドは布を基材にしたものでありウレタン製ではありません。

ナイロン繊維を混合したスパイダー(ダンパー)はICBM(大陸間弾道ミサイル)のノーズコーン(ロケットの円錐型の先端部)を装着するために開発されたエポキシ接着剤を使用して取付けられています。この接着剤のことは自慢らしくローライダーのパンフレットにも記載されていました。JBLのパンフレットでも接着剤の話が良く出てきます。

4機種の各スペックは以下の通りです。なお、Fsはエフゼロのこと、Qtsはキューゼロのこと(ですよね)、Mmsは実効質量のことです。

1808−8SPS
Fs:37.4Hz/Qts:0.587/Mms:106.7g
バスレフ推薦箱の実効容積は、198.2リットル〜311.5リットルです。
能率は96.7dB/1W/1m、アルミリボンボイスコイル。

1808−4SPS(1808−8SPSの4オームバージョン)
Fs:38.9Hz/Qts:0.485/Mms:116.6g
バスレフ推薦箱の実効容積は、198.2リットル〜311.5リットルです。
能率は97.5dB/1W/1m、アルミリボンボイスコイル

1808−8CU
Fs:35.1Hz/Qts:0.338/Mms:143.2g
バスレフ推薦箱の実効容積は、99.1リットル〜184リットルです。
能率は97.7dB/1W/1m、銅リボンボイスコイル

1808−8HE
Fs:39.9Hz/Qts:0.473/Mms:122.6g
バスレフ推薦箱の実効容積は、99.1リットル〜184リットルです。
能率は97.5dB/1W/1m、アルミリボンボイスコイル

1808−8SPSはPA用として一般的な設計がなされており、汎用型ということができると思います。しかし、実効質量が小さく、Qtsが高いため、大型の箱を必要とします。なお、パンフレットには活気がある中低音を備えていると記載されていました。

このシリーズの中では実効質量が大きい1808−8CUは、銅リボンボイスコイルを備えており、比較的小容積のバスレフ箱に適合するそうです。パンフレットによると、大型の箱に装着した1808−8SPSとの比較では低音のノビで劣るが、小型の箱の場合には非常に優秀な性能を発揮するとされています。また、中低音のバランスは自然であると記載されていました。

1808−8HEは中位の容積の箱に適合し、非常に高能率型であると紹介されています。能率は97.5dBと他の機種とそれほど変わらないので、この高能率型というのは「聴感上の能率が高い」という意味だと思います。周波数レスポンスグラフを見てみると、50Hzから100Hzの帯域では100dBを超えています。

使ってみると
この中から1808−8SPSを選び、背面開放型の箱と組み合わせて使用しています。Qtsが非常に高いので背面開放型に合うようです。46cmウーハーというと鈍重な低音をイメージしがちですが、幅のある堂々とした低音であり鈍さを感じさせません。そして、低音の分解能が非常に優れています。ドンというつまったような低音にならず明瞭であり、各楽器の低音がちゃんと分離し、ひと固まりになりません。

また、音量を上げてゆくと躍動感が出てきて、大音量にすると小口径ユニットからは聴くことができない強烈なエネルギー感を味わえます。Fsが39Hzという高めの設定であるため、それほど大きくない背面開放型にもかかわらず40Hzから十分な再生能力があります。

一方、高域も3kHzまで伸びているため使いやすいと思いました。高域側の歪もよく抑えられているようです。1808−8SPSを使用したSP118Xというサブウーハーシステムのパンフレットを見てみると、2次高調波歪や3次高調波歪は高域になってもそれほど増加していないことが示されています。ちなみに、このSP118Xでは、1%の入力時(5Wの入力という意味でしょうか?)の2次高調波歪が0.37%(100Hz)、0.46%(1kHz)、3次高調波歪が0.23%(100Hz)、0.59%(1kHz)と非常に優秀。パンフレットの日付は2001年10月であり、設計が新しいからだと思います。

この1808−8SPSと背面開放箱の組み合わせは大変気に入っています。エージングが進むにつれ低音の重心がどんどん下がり、とても背面開放とは思えない低域再生能力を発揮しました。リーズナブルな価格なので冗談半分で購入しましたが、十分に満足できる結果を得ることができました。


1808−8SPS

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