幸せの黄色いホーン 79話 ごさ丸さんのシステム

2007年5月19日と20日、2日間に渡って尾張・春の陣が開催されました。参加者は、ごさ丸さん、ARISAさん、ヨハネスさん、そして部屋の隅っこで吸音材として活躍する?おとがでるだけ。よく晴れた初日の会場は、ごさ丸さんの家。5月の風が気持ちいい、お昼過ぎの静かな住宅地。迎え入れてくれたごさ丸さんは、とても穏やかな方です。かわいらしいお子様と素敵な奥様、親切なお母様。人懐っこくて賢い座敷犬。広々とした2階の和室に通されると、これは眺めの良い部屋。この部屋で昼寝ができれば最高だなぁと思いました。

ごさ丸さんの明仙堂のホームページは、密閉箱やバスレフ箱についての丁寧な解説が掲載されており、自作箱の自動計算ソフトをいつも使わせていただいています。また、音視界という楽しいエッセイのコーナーもあり、特に「シャウト!マイウェイ」と「バードランド」は何度読んでも素晴らしい。そして、この音視界からは、菅原正二さんのジャズ喫茶「ベイシー」の音がごさ丸さんに大きな影響を与えていることが伺えます。



気持ちの良い風が通るこの部屋に鎮座しているのがバーチカルクワッドの超大型自作スピーカーシステム。実効容積500Lの密閉箱。合板ではなく無垢板、徹底的な補強、そして長さ10cmのステンレス製ヘキサゴンボルトを数百本使用して組み上げられています。箱というよりは、まるで木の塊。中央のホーンは、ボーリング場の床に使用されていた堅い板を削り出して自作されたもの。「東急ハンズでシナ合板を切断してもらいましたぁ」というどこかのお調子者とは次元が違います。

午後のゆったりとした時間。自作派同士のせいか、それともごさ丸さんの語り口のせいか、リラックス状態。音を聞かせていただく前にバーチカルクワッドの製作についてお話を伺いました。また、1インチスロート用の自作ホーンなども見せていただきました。そして、この段階ではバーチカルクワッドというよりも、4発ウーファーの音はどんな感じなのだろうかとか、このシステムの雰囲気は和室に似合うなぁとか、そんなことをぼんやり考えていました。



いよいよ音が…って、うわっ、何だ、これはっ! バーチカルクワッドは音なんか出してない。そこから吹っ飛んでくるのは音ではなく演奏者の気合そのもの。こんなことって!

頭の髪の毛が逆立っていきます。今まで髪の毛が逆立つような経験は数えるほどしかないのに。音量は決して大きくないのですがとにかく強烈。全ての雑念を吹き飛ばし、ついでに聴き手さえも置き去りにしてしまうような加速感。しかもこれはF1マシンの全開加速。音楽鑑賞ではなく、ほとんど恐怖体験の世界です。ギラッとしたサックスの閃光が全身を貫き、むき出しのドラムに引っ叩かれる!

呆然。この音、魂が感じられる、生きてる。これはもう巨大なスピーカーシステムというよりは単体の巨大なスピーカーユニット。それほど音が一塊にまとまっているのです。大型システムにありがちな分散したような音ではなく、ともかく徹頭徹尾、凝縮されている。全く無駄な音がない。髪の毛を逆立てたまま理解できたのは、バーチカルクワッドという形式。この中央にあるホーンの尋常ではないエネルギーを中心に、38cmウーファーの名器、2220Aの4発がぴったり追随し、音の塊をぶつけてきます。

このホーンはダブルスロートになっており、2本の2440ドライバーが接続されています。音視界は、このダブルドライバー化の話で中断しています。ごさ丸さんにお話を伺ってみると、もともとこのシステムはバスレフのバーチカルツインだったのですが、ダブルドライバー化したとたん、システム全体のバランスが崩れてしまい、迷いに迷った末、ウーファー部を密閉の4発に変更、このシステムが誕生したそうです。なお、ダブルドライバーだからといって音が濁るなんてことも全く感じられません。このホーンの音はとても澄んでいて美しいのです。

ベイシーの音と比較するとどうなんですか?とごさ丸さんに尋ねてみると、違った所に来ちゃったみたい、というお話。長年に渡る試行錯誤の末、自分の音を出せたというのは本当にうらやましいことです。それにしても、この音、絶対に忘れることができないと思います。
(ごさ丸さん撮影の画像を使わせて頂きました。ありがとうございました。)


システムの概要

スピーカーシステム
           JBL 2402×2(2305+175×2)
           JBL 自作ホーン+2440×2
           JBL 2220A×4
           500L 自作密閉箱

CDプレーヤー  LUX D500
プレーヤー    LINN LP12+SME 3009S2+SURE V15TypeV
プリアンプ     JBL SG520
チャンネルデバイダー JBL 5235×2
               500Hz、8kHzのクロス、いずれも遮断特性は−12dB/oct
パワーアンプ   JBL SA600(HI)
           JBL SE408S(MID)
           JBL SE408S(LOW)
電源        200V電源

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