幸せの黄色いホーン 68話 帝国の逆襲

ヨハネスさんのリスニングルームに入ると、やっぱり嬉しくなってしまいます。ヨハネスさんはクラシック音楽を愛するあまり、こういう大規模システムに発展してしまったそうです。ところが、こちらは恐ろしく単純。そういう難しいことはこれっぽっちも考えたことがありません。こういう得体の知れない装置から音が出てしまうというだけで子供みたいにワクワクするのです。なにかもう、これは夢のよう。

オーディオの華の一つが大口径ウーファー、そしてEV社の30Wはそうした大口径ウーファーの代表格。これをダブルウーファーにして左右計4発でお使いになっておられます。58話で紹介させて頂いた時は左右の壁面に対向するように配置されていましたが、これを正面向きに変更されたとのこと。また二重扉と強制排気装置を備えたアンプタワー(消音箱)も新たに自作されました。今回のDWS'のオフ会の開催目的は「2220お茶会転じてみんなでかまじいさんのパラゴンを聴いちゃおう」というものでしたが、個人的にはこの正面向きの30W×4発に非常に興味を持っておりました。



初めてお顔を拝見するEV社30W。う〜む、これはデカイ。この76cmウーファーに比べると隣の38cmウーファー(2220C)がミッドバスのように見えます。そして一つ2400Lもの自作箱さえも小さく見えるほどです。この30Wダブルウーファーシステムを箱入りの状態でごさ丸さんが計測したところ、その最低共振数はピタリ20Hzだったそうです。そして密閉箱なんですよ、これ。

前回聴かせて頂いたときには「この音好きです」なんてはっきりしないことを申し上げましたが、それはいくつかの問題点があるように思えたからでした。低音の姿が今ひとつすっきりしない。ダブルドライバーの中低域が重い感じ。また胸につかえるような一種のホーン臭さのようなものが感じられたのです。ところが、ところがなのです。今回はこうした問題が綺麗さっぱり解決されており、超絶の音に激変していました。まさに帝国の逆襲!

眼を閉じなくても眼前にフルオーケストラがズラリと出現するのです。巨大なスピーカーシステムとその幻のオーケストラが重なって見える。広大で素晴らしい音場感。そして、クラシックとは思えないような強烈な迫力とリアリティ。超重量級のスピーカーシステム全体が総力を挙げて臨んでくる、その途方もないエネルギーが心の中にグングン入ってきて気持ちが高揚してきます。そして、このシステムからは多くのオーディオマニアや音楽ファンがこう鳴って欲しいと切望する音が出ています。弦楽器の切れ味と厚み。管楽器のきらめきと咆哮。そして、ここ一発の大太鼓が大砲のように鳴り響きます。もちろん迫力一辺倒ではなく、霧に包まれたような神秘的で奥の深い雰囲気を漂わせることもできます。これ以上、何も求めるものはない・・・



例えばグランドキャニオンのような広大な風景を写真で表現しようとする場合、シノゴでは足らず少なくとも8×10を使用して非常に精密な描写を行い、これをドーンと大きなパネルに仕立てるというのが正攻法だと思います。そうした手法はクラシック音楽の再生と通じるところがあるのではと思っています。クラシック音楽は遠景描写?になりがちですから、そのまま再生すると漠然としてしまい濃密なエネルギー感やリアリティといったものが失われてしまいます。ホールでの音場のスケール感を維持しつつ濃密なエネルギー感やリアリティを再現するという難題への挑戦、これこそがヨハネスシステムの核心だと思いました。

普通のオーディオマニアならまず考えつかないハウルの動く城のような巨大システムからこういう音が出てしまうことに驚き、同時にこのような方向へオーディオを進めて行くことについて勇気づけられました。そして単にシステムを大型化すれば良いのではなく、小さな要素の積み重ねが必要だということも理解できました。この小さな要素の積み重ねには、ごさ丸さんとARISAさんというシンクタンクが影で動き回っている様子。彼等はヨハネスさんの狙っている方向をよく理解しており、彼等の謎に満ちた自作機材で援護しているようなのです。

なお、ヨハネスさんのリスニングルームではセレッション66というパッシブラジエターのスピーカーシステムも聴かせて頂きましたが、その音は残念ながら気持ちの中に入ってきませんでした。素晴らしい音が出ていると思うのですが、メインシステムに打ちのめされ上の空状態になっていたからです。

今回のDWS'のオフ会は経験豊かな方々から色々な解説や経験談を聞くことをでき、大変楽しくまた勉強になりました。ちょっとレベルが高すぎてついていけない感じもありました。特にやまかささんの薀蓄。大変デリケートな話。しかし、うまく想像できないまでも、そうした世界があるということを知ることができたのは大きな収穫でした。また、どんたくさんは試聴用のCD−Rを繰り返し繰り返しかけます。それをリベロさんをはじめとして皆さん真剣な態度でじっと聴いてらっしゃいます。こういう根気は見習わないといけないと思いましたが、雑な性格故にちょっと無理かも。

聴かせて頂いたシステムは沢山ありましたが、かまじいさんのメインシステム、ごんた先生の4350A、そしてヨハネスさんのシステムの3つのシステムの音が強く心に残りました。パラゴン換装実験をして頂いたかまじいさん、シネマスピーカーシステムをセットアップして頂いたごんた先生、宿泊させて頂いたヨハネスさん、本当にありがとうございました。それにしても前回と同様、楽しみにしていた夕食がファミリーレストランというのは・・・

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