幸せの黄色いホーン 17話 2402H−05(1)

現在入手可能なJBLのツィーターには、2402H、2404H、2405Hの3機種があります。しかし、どれか一つだけ、となるとなかなか選べません。

2402H(075)は指向性が狭く高域ものびていないのですが、風格のあるデザインが素敵です。このデザインが2402Hを恐ろしいほどの長寿命製品にしているのかもしれません。発表されたのは1957年だそうですから、すでに45年以上生産が続けられていることになります。

昔話ですが、岡林信康氏のコンサートを小さな小さな公民館に聴きに行ったことがあります。岡林氏が好きな友人に誘われたからです。お客は全部で10人ぐらい。小さな教室程度の大きさの暗い部屋で最前列の折り畳み椅子に座って聴きました。岡林氏も折り畳み椅子に座って向かい合っており、その距離わずかに2メートルぐらい。それなのに、小さなPA装置がちゃんとあってギターを抱えた岡林氏の両脇にはLE8Tと075が。残念ながら岡林氏には興味がなかったので、スピーカーばかり気にしていたのですが、どんな音だったのか忘れてしまいました。

2404Hは、バイラジアルホーンを搭載しており、指向性も広く高域の伸びもあるようです。2360Aのデザインにはこの2404Hが一番合うと思います。また、2404Hを2個パラって縦に並べた様子は、なかなかカッコイイ。

2405H(077)はJBLのスタジオモニターの高域を受け持つ名器です。指向性が広く高域も十分に伸びています。独特のスロット型の形状は、低歪みの澄んだ高音を予感させる上、そのデザインも未だに斬新さを失っていません。

こういう場合は無理しないで、全部買ってしまうというのが一つのやり方ですが、使わないかもしれないのに買うのは畏れ多い、というかもったいない。結局、どれにしようかなと、同じようなことを延々と考え続けてしまうことになります。

ところが、「075か、それとも、077か」なんて、二十年以上考え続けてきたことを僅か一時間程度で決着させてしまうこともあるのです。2002年9月ごろ、JBLプロフェッショナルのサイトを久しぶりに覗いてみた時のことです。そこにはE−TENTという在庫品の直販部があって、売れ残り等を格安で販売しています。残念ながら販売対象地域は米国内のみ。送料は無料です。例えば、製造中止になってからだいぶたつ、重さ8.4kgの立派な38cm口径のフルレンジ(3インチボイスコイル)のM151−8が、一本わずか70ドルで数十本売り出されたことがありました。思い切って8本ぐらい買ってしまおうか、などと考えてしまうのが健全なスピーカーマニアの証拠であり、こういうのを世間一般には狂気の沙汰と呼ぶのでしょう。

こんな具合にフワッと正気を失うのが快感なので、月に一度ぐらいの頻度で、このE−TENTを見ていたのですが、その夜は一番下の欄に「2402H−05」と小さく表示されているのを見つけてしまいました。型番の隣には「2402H WITH 2405 DIAPHRAGM」とだけ説明されていました。価格は1個110ドル(2402Hの北米での相場は1個250ドルのようだから半額以下)。販売個数は50個ぐらいでした。それにしても、なんなんでしょう、これ?

home

inserted by FC2 system