幸せの黄色いホーン 15話 ヨーロッパドライブ(2)

2つ目は、ウィーンのオペラ座。何か聴かせてもらおうとオペラ座内の切符売り場に切符を買いに行ったら、今晩はバレエとのこと。どの席にしますか、と聞かれたので、安くもなく高くもない席をお願いしますと言うと、ボックス席を勧めてくれました。

クラシックもそれほど詳しくないのですが、高校生のころ上野の学生会員で月1回オーケストラを聴きに行っていました。値段は忘れてしまったのですが、6か月分が一綴りで、こずかいで買っていたのでずいぶん高かったという記憶があります。しかも、オーケストラが豆粒にしか見えないような最上階の席のことも多く、もうちょっといい席で聞かせて欲しいと思っていました。だいたい、ああいう席は、高所恐怖症ではないけど、ちょっと高くて怖いぞ。育ち盛りだったせいか、疲れていてほとんど居眠りしていたこともあった。このころ親がもらってきたコンサートチケットを譲ってもらい良い席で聴くこともあったのですが、そういう時は熱心なクラシックファンになったようで単純におめでたい気分になれました。

話を戻しましょう。バレエを観るのは初めてでした。しかし、シンデレラを現代風にアレンジしたもので何も知らなくても楽しめました。夜も遅く眠いはずなのに子供も喜んでいました。シンデレラ役のバレリーナが小柄なショートカットの女の子でしぐさが素敵です。オーケストラも手馴れた感じ。当たり前か。しかし、ちょっと不思議に思ったのはオーケストラが舞台の手前に配置されているにもかかわらず、オーケストラの音が舞台の奥から聞こえてきます。そういう風に聞こえるように設計されているのでしょうか?スピーカーがあるわけじゃないし。どちらがよいというわけではありませんが、ボックス席が壁面にずらっと並ぶなど、ホール全体の構造もまったくちがい、音響的にも湧き上がってくるような感じで日本のコンサートホールとはだいぶちがうようでした。

3つ目はモンブランに行ったときのこと。ふもとの町に泊まったのですが、その町の中央に教会の前を通りかかると、パイプオルガンの演奏が聞こえてきました。妻も興味があるみたいなので、すぐにその教会の中に入ってみました。それはミサではなくパイプオルガンの練習中だったのです。

教会はたくさん見学しましたが、教会でパイプオルガンを聞くのは生まれて初めて。またまた圧倒されながらよろよろと席についたのですが、この音が本当に凄いというか凄まじい。YSTの100台分という感じです。ブォーという低音が建物全体を揺らすようでした。ともかく閉鎖された空間で低周波を聞くと心理的な圧迫感が凄い。教会で最後の審判とかの話を聞いて、そのあとパイプオルガンのこの恐ろしい迫力の低音で脅かされたら、ステンドグラスの効果と相俟って誰だって怖くなって入信するに違いない、なんて考えてしまいました。もしかすると、パイプオルガン設置の動機はあまり誉められたものではない?

このように旅に出ると色々な音楽体験をすることができます。思ってもみないところで音楽を聴くことになるから、環境によって音のタイプが違ってしまうのが良く分かります。そして、半開放型リスニングルーム、原野に土地でも買いましょうか。

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