幸せの黄色いホーン 07話 餅のねばり(2)

次の週末に222ESJをつないでみました。音を出すとホーン臭さが、完全になくなったことがすぐに分かりました。メガホンは、どこかに行ってしまいました。でも、理由はさっぱり分かりません。

さらによく聴き込んでいくと色々なことが分かりました。ホーン臭さとホーンの浸透力は違うものだということ。222ESJはホーン臭さをほとんど消滅させたのですが、ホーンの浸透力はそのまま維持しています。浸透力はリアリティを生みます。歌手の口もとをまじかに感じます。

このホーンの浸透力は、直接音と間接音の割合が原因なのではないかと考えたりしています。ホーン型はホーンにより指向性が限定されています。このため、スピーカー正面では直接音の割合が大きくなる。一方、ドーム型のような指向性の広いスピーカーでは、ユニットから放射された多くの音が、スピーカーの側方や後方に回り込み、壁や天井に反射し、間接音となってリスナーの耳に届きます。このため、間接音の割合が大きくなる。この差ではないかと。

ドーム型等のスピーカーからでも、ホーン型のような音を聴くことができます。中高域用のドーム型ユニット正面から10cmぐらいの位置に耳を近づけると、ちょっと違うかもしれないけれど同じ傾向の音が聴けると思います。この場合は、直接音が多く耳に届いている。尖った音とかケバだった音とか疲れる音だとかいう言い方もできるし、ベールを剥いだような音とか生々しい音だとかいう表現でも当てはまると思います。

それから、指向性が限定されていると、音波が広がりにくいため、音波の形状が崩れにくい傾向もあるのではないだろうか、などと考えたりしています。音波は空気の疎密波なのですが、その形状が到達距離に応じてどの程度崩れているかということを人間は感じることができるのではないかと。音波の形状の崩れ方が小さいと、音源の位置が近いことを感じることができ、これが音の新鮮さであるリアリティを感じさせるのではないかと。そして、この疎密波の崩れは、エネルギーが小さくなる高域になるにつれ顕著になるのでは。オカルト理論?。

もう一つ。JBLのバイラジアルホーンを見ていると、ホーンの開口端が非常に大きく開いています。これはホーンロードをかけるという形状ではなく、音波がスムーズに(疎密波を崩さないように)ホーンの外へ広がるように設計されているように思えます。ごめんなさい、これもオカルトですよね。

話は戻りますが、222ESJと組み合わせたことで、2155Hの評価が一変しました。222ESJと組み合わせていたケンウッドのLS−11EXは、悪くないのですが、鮮度というかリアルさでは全然太刀打ちできません。

もうひとつ気付いたことは、222ESJの電源を入れた直後よりも15分ほどしてアンプが温まった後のほうが、ホーンの音のしなやかさが増します。こうしてみると、ホーン臭さというのは、ホーンだけの問題ではなく、アンプが鍵を握っているようです。

こうして望外の成果が得られたのですが、低音の力強さではA501の方が222ESJよりも優れていました。A501はトランジスタのパラレルプッシュプルです。しかし、何度もつなぎ換えて確かめたのですが、総合点では222ESJの方が上回っていました。以来、A501を使用する機会はほとんどなくなってしまいました。

ホーンとFETアンプの相性を指摘してくれた出原氏の表現は控えめなのに適確であり、高級アンプメーカーの社長ならではと感心しました。それから、普及機種にもかかわらず222ESJをちゃんとほめた長岡氏のお人柄に頭が下がりました。お二方ともこの世にいらっしゃらないことが残念です。

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